• お客様との一問一答

家系図の不思議

松崎整道居士 講演

付記

模範的吉相の墓

写真欄に掲げた模範的な墓は、本邦屈指の某富豪家のものにして、 京都の某寺にあるその旧墓所の一部分を示したに過ぎないが、 その模範的として著者の称揚措かざるゆえんのものは、 同家中興の祖すなわち同家の基礎を為して、今を去ること二百三十七年の昔、 元禄七年に没せられたその人以来同家は、京都に六家、東京に五家、いずれも富かつ栄えて一家一門、今や十一家の多きに至れるが、その中興の祖以来代々順々に各家とも祖先に習い写真に示すとおりほとんど同型の墓石を建立している。
もっとも多数ある中に一二基異型のものも全くないとはいえないが、その異なる点をいえば、祖先この方多くの石碑は棹石の頭にあたかも市女笠のような笠があるのに対し、屋形のような笠を戴いた形ぐらいのことで、あえてその差異を挙げることもなく、そのへんにある幾多の成金の輩のように一基の石碑に数万円を投ずるような浮華この上なき石碑を建てるものとは異なり、その大きさも極めて大きなものではなく、しかも質素で堅実なものを建立せられ、決して時流を追うことなく今日に至っており、実にまれに見る家風の奥ゆかしさ、ことごとく敬称しないわけにはいきません。
この東京におけるその一門の墓所は、元本所の某寺院内にありましたが、 先年野方のほうに数千坪の土地をもとめてそこに移し、そこには位牌堂を設け、 礼拝供養はもちろん、一門の仏事法要を営むのに差支えがない設備を有する建築物があります。
そしてその墓所はすなわち東京における五家の墓地で、各百坪ほど別々に生垣をめぐらし、 別に遥拝所として京都における宗家の祖、ならびに他の五分家の祖に当たる石塔を 一基づつ京都そのままのものを建て、なおさらに遠祖の墓として五輪塔三基を建てて祀られたことは、 その行き届いた祭祀の方法よろしきには只々敬服するほかはありません。

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